吉田敦彦『ギリシア神話入門 プロメテウスとオイディプスのなぞを解く』 2006年 角川選書 ¥1600
心理分析の中で「エディプス・コンプレックス」は、どなたもご存知の「息子の父親殺しと母親との近親相姦」からの「去勢」の内容がテーマとして提示されている。
それを個人的に釈然と出来ないことから、いつか改めて読んでみようと考えていた。
既にエディプスの人生は、生前に予言されたものであった。名前は、産まれた時父にピンで貫かれ腫れて変形した両踵を指し「腫れ足(踵):オイディプス」を意味した。成長し、出されたスフィンクスの「謎々」に人間(自分自身)と答え退治できたことを切っ掛けに、エディプスの運命は「テーマとされる」歯車に絡め取られていく。何も知らない本人は、自らの運命の謎を解き、知り得た内容に嘆き、結果、苦しみのあまり自らの両目を潰してしまう。吉田は、その運命に翻弄されながらも真摯に生きるエディプスの姿、賢さ、逃れられない運命の悲惨さをクローズアップしていた。
焦点の当て方により物語は、言葉の持つ意味が大きく変化し、比喩の表現として利用することの難しさを確認した。テーマ以前に「言葉を使うことの困難」を改めて感じた。
ギリシア神話入門―プロメテウスとオイディプスの謎を解く (角川選書) | |
吉田 敦彦
角川学芸出版 2006-06 |