鹿児島県臨床心理士会でスーパービジョンのことを調べています。その機能は、たぶん日本人の方が思われているより幅広い機能を有しているようです。
スーパービジョンの3つの領域
Hawkins (2007)、Kadushin (1976)、Proctor (1988)は、名称こそ異なれスーパービジョンの機能を同じように3つに分類しています。
(Hawkins) (Proctor) (Kadushin)
発達・教育的側面 Developmental Formative Educational
(スーパーバイジーの技術力、理解力、適応力などの向上を目的としたもの)
回復・サポート Resourcing Restorative Supportive
(クライアントの苦しみ、痛みなどに対応しているスーパーバイジー自身に対して、サポートしていくことを目的としたもの。たとえば、カウンセリングに対して否定的なフィードバックを受けたときや、クライアントに不測の事態が生じたときのスーパーバイジーの動揺を扱う)
質的・管理的側面 Qualitative Normative Managerial
(心理療法の質的な管理機能を目的としたもの。技術や経験ことだけではなく、人として陥りやすい側面、盲点、偏見などに対して、気づきをもたらしてもらうように働きかけるもの)
Hawkins, P. & Shohet, R. (2007). Supervision in the Helping Professions (3rd ed.). Buckingham, UK: Open University Press.
Kadushin, A. (1976 and 1992). Supervision in social work. New York: Columbia University Press.
Proctor, B. (1988). Supervision: a co-operative exercise in accountability, In M. Marken and M. Payne. (Eds.), Enabling and Ensuring, Leicester National Youth Bureau and Council for Education and Training in Youth and Community Work.
スーパービジョンの6つの領域
Unger (2006)は、スーパービジョンの機能をより細かく、次のような6つに分類しています。
サポーター
(スーパーバイジーの感情的な側面をサポートしたり、スーパーバイジーが心理療法にあたっているときの経験の意味を個人的なレベルで探索したりすることを目的とするもの)
スーパーバイザー(ここで、この用語は以下の意味で限定的に解釈してください)
(スーパーバイジーの才能や能力を引き出し、可能な限りスーパーバイジーが望ましい臨床家となれるように助けていくことを目的とするもの)
ケース・コンサルタント
(臨床場面におけるもっとも良い選択肢をアドバイスしたり、クライアントの状況や必要性に対してコメントするものことを目的とするもの)
トレーナー/教員
(心理臨床において、技術的な側面のリハーサルをおこなったり、心理療法を実演してコーチしていくことにより、どのように介入するのかを教育していくことを目的とするもの。スーパーバイザー自身の経験だけでなく、この分野で培われてきた知識も伝えていく)
同僚
(ピア・カウンセリング的関係において、スーパーバイズの機能をお互いに提供していくことを目的とするもの。)
代弁者・擁護者・アドボケイト
(スーパーバイジーまたはクライアントの健全性を確保していくために、スーパーバイジーが行動を起こせるように働きかけたり、スーパービジョン・セッションの範囲を超えて、資源を獲得するために行動を起こしていくことを目的とするもの。たとえば、業務内容の範囲や条件など)
Ungar, M. (2006). Practicing as a postmodern supervisor. Journal of Marital and Family Therapy, 32 (1), 59-72.