私とカウンセリング 101

私とカウンセリング by 菊池美保子

“旅は私のカウンセラー”

今年の春から夏にかけて思いもかけない楽しい旅のチャンスがたくさん訪れました。20歳でのひとり旅をきっかけに学校勤めであった私は長期休暇を利用しては、国内旅行へと出向いていました。子育てもほぼ終わり、介護を必要とする親は今はなく(3名は他界)86歳の父親が元気であり、まだ孫もなく、夫の理解さえあれば時間とお金の都合をつけて旅立てる私でもあります。

まずは3月末、86歳の父親を元気がご褒美と妹と三人の旅を計画しました。親孝行の旅と銘うって開通したばかりの新幹線“みずほ”に乗り、近江の国、琵琶湖一周のドライブの旅となりました。

次の旅はなかなか行く先の希望が合わない夫とですが、中国の桂林へ行くこととなり、気心の知れた夫妻と一緒にツアーに参加して漓江下りののんびりした旅です。

そして待望の夏休み前に飛び込んできたのが格安のトルコツアー旅行、なかなか同行する人を捜すのはむずかしいのですが、たまたま絵の展覧会で会った知り合いの娘さん(なかなか社会に出ることができず悩みを抱えている方)との語らいから、お母様と二人で同行したい気持ちが強くなり、先方に押されぎみの申し込みとなりました。

トルコの感動もさめやらないうちに、申し込みをしていた北海道でのカウンセリング学会への参加で、少し仕事モードの切り替えをしようとしたものの、せっかく北海道に行くのだったら、以前から行きたかった利尻島へ足をのばしたいと、私の旅行ムシは動き始めました。朝7時過ぎに鹿児島発、東京、札幌、利尻へと3回乗り継いで、3時過ぎには利尻島でひとり散策をしていました。

そしてまた、トルコツアー旅行の申し込みの話を父親にすると、その旅行はキャンセルにして、自分を台湾旅行に連れて行ってほしいと。何も私でなくても他の兄二人や妹でもと、尻込みした私に、あなたが一番旅慣れているからとお墨付き!!

最後はこれまた思いもよらぬ長女からの誘いはアメリカで、サンフランシスコとソルトレイクの旅、お金はないという私に「親孝行した娘に今度はあなたの娘が孝行してあげるから」の甘いことばに誘われ、すべてを娘に託して7日間。英会話のできない私は会計係と称してお金出し入れと記録担当。日本では恐さ知らずの私も海外のひとり旅は無理だと思いました。

こんなにも家を留守にしてよかったのかと気にしながらも、好き勝手に写してきた多くの写真とビデオの整理を夫に頼りつつ、旅の報告ができる連れ添いがいることに喜びを感じ、大きな旅のおみやげと思い出を語っています。春から夏の終わりの6ヶ月間を振り返りつつ、多くの旅をしている私は、健康と好奇心あふれていることにも感謝することです。そしていろいろなポジションでの自分を見つめる旅でもあったかと思います。

・家族の旅~親孝行と銘うって、亡き母を思い、父と妹とゆっくり過ごす旅。

・夫婦の旅~落ち着いた語らいと食事と酒を楽しむ旅。

・他人との長旅~私の役目は少し不安定な気持ちになる娘さんを母親とともに見守りながら、ツアーの多くの仲間とふれあい、またトルコの大自然とそこに暮らす人々の文化に感動する旅。

・ひとり旅~目的は学会への参加。多くの人たちとの出会いの中での実のある学習。そして時間をいかに上手に生かすかを考えながら少しの解放感と緊張感を味あうひとり旅。

・父子の旅~親に頼られる娘となったことを実感しつつ、ツアーの仲間に親子旅を羨望され、高齢でも元気で旅することの夢を与える父の姿に感動。

・母子の旅~言語でのコミュニケーションを計れずさびしい思いをする自分、娘を頼りにそして迷惑をかけないように気遣う自分。でも若い娘と一緒に過ごす楽しい旅。

私に訪れた数々の旅の経験を通して、人々との出会いの楽しさやおもしろさ、素晴しく計りしれない自然の荘厳さと神秘さを感じ、地球上のいろいろな場所で、遠く永い歴史を経て人々が暮らしていることを体感し、自分の生きてきた60年を振り返る旅であったのかもしれません。ひとり旅から40年が過ぎた今、旅は人生そのもの、いいえ、人生は旅の途中であることを感じることでした。

春の訪れとともに盛り上がりを見せてくれた私のさまざまな旅は、日頃の忙しさの中にいる私の心をどんなにか癒してくれたかと思います。秋の訪れとともに平常の暮らしに戻り、それを楽しみながら少しでも人の役に立てる自分でありたいと思う毎日です。

おわりに、こんなに楽しい思いをしてきて少し後めたい気持ちになります。ひとつは、東日本大震災のあとでしたので、「旅行していいのかな」という気持ちになり夫に尋ねると「私たちは普通に暮らしていかないと日本の経済は動かないから」ということばで、そうか、自分にできることは、お金を使うことでもあるのかと思いながら、目につく募金箱に少しずつ募金しようと決意しました。もうひとつは私の周りにいる悩み多き人たちのことを考えた時、この楽しさを語れない自分がいました。でも、私が元気でリフレッシュして、まわりに接することも大切であると言いきかせている私もいました。

以上