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私のおすすめ本 by 竹之内麗子

村井俊哉『人の気持ちがわかる脳―利己性・利他性の脳科学』 2009年 ちくま新書 ¥735(税込)

電話相談をしていると、人の気持ちを量りかね、人の気持ちを知りたいと思う人が多いのを痛感する。かくいう私もその一人ではある。私たちは、社会の中で生き、日常が人と人との相互関係から成り立っているから、自然と人の気持ちを推し量りながらの言動をとろうとする。

技術的な意味での人の気持ちがわかる能力はとても重要だ。この能力に恵まれないために、社会生活で大変な苦労をしている人たちもいる。しかし、技術的なことよりももっと重要なことは、なんのためにということではないかと著者は主張する。駆け引きをして相手を出し抜くか、社会全体のために助け合うか。もっとも、人の気持ちを知りたいと思うのは、自分にとっての喜びや苦しみの全部ではないが、少なくともその一部を他の人たちと共有しているのだと述べている。つまり、副題にある脳の利己性・利他性に焦点を当てて述べ、ある意味では、常識的な結論に達しているともいえる。脳の精神科医でもある著者は、現代社会であげられる症状例、副内側前頭前皮質に傷がつくと人はなぜ拒絶するのか、高次脳機能障害と感情のコントロール、不公平な提案と頭皮質前部の反応など、臨床例を挙げながら脳の仕組みと気持ちとの関係も解説していて学ぶことが多い。

 

人の気持ちがわかる脳―利己性・利他性の脳科学 (ちくま新書)
人の気持ちがわかる脳―利己性・利他性の脳科学 (ちくま新書) 村井 俊哉

筑摩書房 2009-07
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村井俊哉

1966年大阪府生まれ。京都大学大学院医学研究科修了。医学博士。専門は臨床精神医学一般、行動神経学、高次脳機能障害の臨床。マックスプランク認知神経科学研究所、京都大学医学部附属病院助手などを経て、現在、京都大学大学院医学研究科准教授。京大病院ほかで精神科臨床を行う。また様々なこころの病が、脳の働きのどのような障害から起こるのか、画像研究などをもとに探究している。著書に『社会化した脳』(エクスナレッジ)、訳書に『脳:回路網のなかの精神』(新曜社)、『臨床神経心理学』(文光堂)がある。