わたしのおすすめ本 74

わたしのおすすめ本 by 江田照美

吉田敦彦『ギリシア神話入門 プロメテウスとオイディプスのなぞを解く』 2006年 角川選書 ¥1600

心理分析の中で「エディプス・コンプレックス」は、どなたもご存知の「息子の父親殺しと母親との近親相姦」からの「去勢」の内容がテーマとして提示されている。

それを個人的に釈然と出来ないことから、いつか改めて読んでみようと考えていた。

既にエディプスの人生は、生前に予言されたものであった。名前は、産まれた時父にピンで貫かれ腫れて変形した両踵を指し「腫れ足(踵):オイディプス」を意味した。成長し、出されたスフィンクスの「謎々」に人間(自分自身)と答え退治できたことを切っ掛けに、エディプスの運命は「テーマとされる」歯車に絡め取られていく。何も知らない本人は、自らの運命の謎を解き、知り得た内容に嘆き、結果、苦しみのあまり自らの両目を潰してしまう。吉田は、その運命に翻弄されながらも真摯に生きるエディプスの姿、賢さ、逃れられない運命の悲惨さをクローズアップしていた。

焦点の当て方により物語は、言葉の持つ意味が大きく変化し、比喩の表現として利用することの難しさを確認した。テーマ以前に「言葉を使うことの困難」を改めて感じた。

 

ギリシア神話入門―プロメテウスとオイディプスの謎を解く (角川選書)
ギリシア神話入門―プロメテウスとオイディプスの謎を解く (角川選書) 吉田 敦彦

角川学芸出版 2006-06
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オグ・マンディーノ『この世で一番の奇跡』 2001年 PHP ¥1200

本棚のきれいなブルーの背表紙が目に留まり「いつ、こんな本を買ったかナー?」と何かを始めるには億劫な気分の時、何とも判断の付かない状態で手に取ったのだった。読む目的がはっきりしない本に、時間を潰されるのは惜しいと感じ「本棚に戻そう、もう終わろう」と思いながらもつい読み進めてしまった。

ただ、「この世に産まれ出たこと」の意味が書いてある気がした。ボロボロ涙が零れた。神の表現はあるが、それについて書いてある訳ではなく「命が、ここに存在する」ことのかけがえの無さが、その文体で書いてあるだけだった。宗教とか、信心とか全く無い自分が、何かを思い出した気がした。読んで理解するより、読んで感じる本だと思った。

 

 

この世で一番の贈り物 (PHP文庫)
この世で一番の贈り物 (PHP文庫) オグ マンディーノ Og Mandino

PHP研究所 2003-08
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