私のおすすめ本(40)by 中野則昭

日高恒太朗「新興宗教はなぜ流行るのか」新人物往来社 1300円


 ワイドショウで新興宗教の犠牲者になったある有名女子大学生の話題が取り上げられていた。そこで,上記の図書を読んでみることにした。
 文化庁は,1992年「日本の宗教団体の数は,230,267団体で,その内訳は,神道系90,952,仏教系88,140,キリスト教系8,891,諸教42,284」あると報じた。しかも,信者数は,2億を超えており,日本国民の2倍の数字だという。
 1973年の第一次石油ショック以降,高度経済成長の行き詰まり,科学技術の革新によって引き起こされた負の側面がクローズアップされてきたこと。80年代に若年層をターゲットとした「トレンド文化」が台頭し,若者の幼児化現象とともに,現実逃避の若い世代が増え,金が世の中を支配するようになったこと・・・等が,新興宗教の台頭につながっている。
 こうした時代への反動として,若者の精神世界への傾斜が始まり,空しさからの救いを宗教に求めたといえる。ただ,現在のように情報が溢れている社会の中では,情報に過敏な若者が増えたこともその一因である。
 勧誘の方法として,宗教色を抜きにした趣味サークルへの誘い,高利潤獲得の方法,有名人の活用・・・等,いろいろだが,いずれにしても多額の金を宣伝費として使い,マスメディアをうまく利用し,教勢を伸ばしてきた。
 どんな人でも,不安・悩み・孤独感や物欲を持ち,その救いを何かに求めたいと考えている。この人間の心理をうまくついているように思われてならない。