私とカウンセリング(41)by 江口豊

-実践の場としての記録から-
 近年の犯罪情勢の変化に伴い,ある日突然不条理の事件や事故に巻き込まれる犯罪被害者の人たちは,全面的に増加する傾向にある。得に心のケア等の支援が必要とされる殺人や強盗,性犯罪等の事件や事故に巻き込まれ,悩んだり苦しんだりしている人が多いものと考えられる。
 カウンセラーとしての場である犯罪被害者支援センターは,相談者4名(午前・午後各2名),事務局員3名,計7名のメンバーで構成されている。また隣の部屋には,警察署員3名が待機していて,刑法問題などについての指導をしている。この10名が被害者による電話相談や直接相談の良きアドバイザーとして,その人に応じた適切な支援を行うことを目的としている。
 10月4日(水)10時20分,3点コールがあり,受話器からは低くそして急いでいる口調の声が聞こえてきた。事案の概要は次のようなことだった。①友達同士が喧嘩になった。息子が仲裁に入ったところ加害者の持ってきた包丁で脇腹を刺され死亡した。②加害者は,殺人者として逮捕された。③当時,被害者側は警察署から現場の説明を受けているが,詳しいことを知りたい,との内容だった。途中事務局側とのミーティングがあり,カウンセリングと次のステップへの案内をあわせて約40分の話の流れとなった。この日の電話相談は,これっきりで終わったわけではない。この日のことが記録され大切に保存されることによって,被害者に対する次のステップへの手がかりとなるのである。記録簿の具体的な内容は次の機会にすることとし,今回は資料を持って簡単に提示します。
 カウンセラーとして常に心がけていることは,当然なこととして,①純粋性と自己一致,②無条件の積極的肯定,③共感的理解といった基本的な立場を踏まえた上で,相手のひとつひとつの言葉を大切にしながらアプローチしてきたつもりである。被害者とは当事者本人だけでなく,親御さんにとっても大きな悩みとなり苦しんでいらっしゃる様子がうかがえる。このような状況の中で,「KCS」で学んだことをフィールドバックすることによって反省し,これから「KSG」で学習していくカウンセラーとしての役割を大切にしながら,犯罪被害者支援のために精進したいと思っている。