あなたがあなたであるために―女子高生のための「書くこと」の本 | |
森 絹江
ユック舎 1999-06 by G-Tools |
小さい頃から「書くこと」が大好きだった著者が,書くことを仕事にする記者になって20年。その間,「嘘を書いているのではないか」と,書くたびに苦しみながらも,書かないではいられない自分,書きたい自分。書くことによって,自分の内面を解放し,自分を見つめながら仕事を続けてきた。
「これでいいんだ」と思うようになって,素直にかけるようになった。素直とは,決して親や教師などの言うことに黙って従うことではない。いったん無心になって相手を受け入れることである。そのとき,初めて,単なる反発ではなく,相手と自分の違いや,自分はこう思うという明確な意志が生まれてくる。
わたしは,インタビューして記事を書く著者の仕事は,カウンセラーの仕事と似かよっていると思うことだった。カウンセラーの仕事は,生きてきた環境も価値観も違ったクライエントが心の中を表現し,それをカウンセラーが洞察しながら,共に歩む仕事である。相手を受容し,相手の心を解放させることによって,自分の欠点や弱さ・ありのままの自分の現実に直面させ,自分の力で解決して行く手助けをするのが仕事である。
著者が言うように,記事を書くことも十分に時間をかけ,相手を理解した上でなければ読者に感動を与えるような作品は書けない。共感なく,高みから分析し,言い切ってしまうことは,本当の意味での信頼関係を断ち切ってしまうのかもしれない。