内田樹著 「日本辺境論」 2009 新潮新書 777円
本書の導入部分において、内田樹は、梅棹忠夫の言葉を引用し、なぜこれほどまでに日本人は外来の新知識に飛びつくかを説明しています。それは、日本人は「ほんとうの文化は、どこかほかのところでつくられているものであって、自分のところのは、なんとなく劣っているという意識」に取り憑かれているからです。これが梅棹は半世紀以上前にこの文章を書いているが、今でも状況は変わっていないのではないかと、内田は指摘します。
「日本文化というのはどこかに原点や祖型があるわけではなく、『日本文化とは何か』というエンドレスの問いの形でしか存在しません」と述べるように、多くの日本文化論が今まで書かれてきました。これも、そのうちのひとつですが、論点の掘り下げ方が大変鋭く、根底的であると感じます。
学ぶという点においても、辺境人である日本人の学習は大変効率が良いのであると指摘し、その理由についても実に納得のいくものでした。
また三国志の曹操による師匠からの学びについても、面白かった。学ぶ姿勢が学びを生むのです。教える側の知識がなくても、また教える意志すらなくても、この姿勢がある限り学びは成立します。実にその通りだと思いました。
国重浩一
日本辺境論 (新潮新書) | |
内田 樹
新潮社 2009-11 |