わたしのおすすめ本 115

わたしのおすすめ本 by 坂上久恵

岩宮恵子著 「フツーの子の思春期―心理療法の現場から」 岩波書店 2009 

5月から高校へ自立支援相談員として勤務するようになり、高校生の話を聴いてきました。その中には、自分と向き合い、考え、悩み、葛藤している生徒たちがいました。一方で、自分の言葉で語ることが出来ず、期待するようにこちらを見つめる生徒、こちらの問いかけに「別に」「フツー」と言ってどんなことに悩んでいるのかわからない生徒もいました。後者の生徒たちからは、ただ日々の生活の流れに身を任せて自分の考えというものが薄い印象や、小・中学生のような幼い印象を受けました。このような生徒たちをどのように理解していったらいいのかを考えていた時、この本に出会いました。

岩宮さんは、「ふつう」と「フツー」という言葉に注目して、これまで言われてきた「ふつう」の思春期と今どきの「フツー」の思春期について丁寧に考察されています。不用意な話をせずにすむための防御壁としての「フツー」、内面で起こっていることを言葉にできない時の表現としての「フツー」。『「フツー」は「ふつう」よりも感情がこもらず、ちょっと乾いているニュアンスがある』という「フツー」の思春期を、様々なエピソードをもとにとらえなおしている内容は、「なるほど」と感じさせられることが多く、読み応えがありました。今どきの思春期を理解する一つの切り口として、おすすめの一冊です。

 

フツーの子の思春期―心理療法の現場から
フツーの子の思春期―心理療法の現場から 岩宮 恵子

岩波書店 2009-04-24
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