わたしのおすすめ本 by 内村涼恵
斎藤学(さいとうさとる)著 「家族」はこわい 日本経済新聞社 1994年 定価(1200 円十税)
「母性化時代の父の役割」という副題がついている。
内容は、第4章からなる。
第1章 家族はフィクションだ
第2章 甘える夫、「母」になる妻
第3章 父は子に何ができるか
第4章 日本の父親と会社教
親の仕事(機能)は、次の3種あるとしている。
1 抱くこと(ホールディング)
2 子供の行動に限界を設定し(リミット・セッテング)、欲求不満を起こすこと
3 子別れ(デタッチメント)
これらの親の機能を果たすために、父親の本来のあるべき姿とは、どんなものかを取り上げている。
近年、話題となった3人の父親(・金属パットで息子を殺した父親・イチ口一選手や、タイガーウッズの父親・子どもがいじめられ自殺してしまった父親)を例にしながら、次第に一般論へと進んでいく。
家庭内暴力、不登校、引きこもり、非行、摂食障害等の問題の萌芽は、日常の親子関係、家族関係の中で醸成されていることが多いと言われて久しい。このような中で、父親は、常に「やさしさ」と「ものわかりのよさ」だけで対処しようとしていていいのか。「母親の助手」のような役割に甘んじていていいのか。そんな「父親の存在」に子どもは魅力を感じているのかを問いかける。
男女共同参画社会の現在、父親として、どのように親の機能を果たしていけばいいのか、父親がその機能を十分果たしていくには、母親をはじめ家族はどうあればいいのかを考えさせられた一冊であった。
全体的に、平易な文章で読みやすい。
著者は、精神科医・家族機能研究所代表者で“行動する精神科医”と言われ、活躍中。他に、「家族依存症」「家族という名の孤独」「アダルト・チルドレンと家族」「食べすぎてしまう女たち」等の著書がある。
「家族」はこわい―まだ間にあう父親のあり方講座 (新潮文庫) | |
斎藤 学
新潮社 2000-06 |