わたしのおすすめ本

私のおすすめ本(41)by 江田照美

C.G.ユング著「転移の心理学」みすず書房 2004 ¥2800


 現在勉強会のテーマになっている「転移」についての本を探すうち、インターネット上にて、目に付いたものの一冊。林道義他の訳本で、序文から、ユングの、フロイトとの転移現象への意見がいきなり書かれており、二人の派内での流れが彷彿とされ興味を引く。題名に反して「転移とは何ぞや」の具体的記述は無い。錬金術(これ以前に彼は『心理学と錬金術』により「無意識の心理学が錬金術との間に経験的によく似た現象が見られ、密接な関係にあること」を説明しているらしく、そちらを先に読むことを勧めている)を切っ掛けに、彼の得意とする、歴史の中の古い図柄や表現を使った「集合無意識的比喩」を使い説明を進めている。彼は、錬金術を「結合・神秘なる婚礼」として扱う。人間的性愛の神秘的合一は、精神の結合に通じ、転移は結合未完状態における解決のための一手段として、(全てではないが)発現し臨床において応用できうる事を示唆する。
 患者と医師は、投影から始まり、共通の無意識内容で結ばれる。患者から個人的に刺激を受ける事を認められない(認めたくない)医師は「医師のペルソナ」の影に隠れ、回避しようとするため、洞察が不足し患者は、間違った助言を受けることになる。無意識内に感染し、治療者に転移することによって治療の上での可能性が引き出されるためには、治療者は自らに付された内容を、患者以上に意識化できなければならない。厄介なのは、彼の中にあり本来潜在的なままである内容が、活性化されてしまうことで、そのことは、実は彼の職業にとっての付随現象であり、その職に就く気にさせた「運命的な資質」のためと考える等と言うが、それさえも彼の言う「共時性」の意を思い出させる。・・・などなど、彼の観点からの論が展開されかなり興味深い。
 面白いと思ったのは、転移は分析的心理療法以前の医師たちにおいて「ラポール」と呼ばれていたということである。

転移の心理学
転移の心理学 C.G. ユング Carl Gustav Jung 林 道義

みすず書房 2000-10
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