わたしのおすすめ本 125

わたしのおすすめ本 by 山下みどり

國分康孝著 「カウンセリングの理論」 1980 誠信書房 2415円

 

私が教育カウンセラーの資格をとるときに,手にした本である。今もときどき開いてみることがある。

國分康孝先生は,「折衷主義」に立ってこの本を書いている。折衷主義とは,来談者の問題に応じて,また面接の段階に応じて,もっとも適した方法をとる立場のことである。既存の各理論から活用できるものは何でも使う立場のことである(p.25)。

カウンセラーは,クライエントを助けるのに役に立つ限り,そして自分の気質に合う限り,できるだけ多様な理論にふれて,それを自分なりに統合しなければならない。統合されたものはやがて面接体験を重ねるにつれ,再構成されるであろう(p.34)。

カウンセラーは,クライエントのためになるなら使えるものは何でも使う。今,スクールカウンセラーをしている私も,相談に来てくださる方々のためになにができるかをいつも考えている。来てくださった方になにかおみやげを持って帰ってもらえるといいなと思って話を聴いている。

1980年に出版されているので,ナラティヴなどの新しい理論は入っていないが,一冊読めば現存のカウンセリング理論が概観できる。オーソドックスな理論を学ぶには最適だと思う。読んでいると國分先生の顔や声がうかんでくるような気がする。この勉強会でもいくつもの理論の本を読んできた。それらをまとめて見渡せるのがこの本だと思う。ちなみに,書かれている理論は,精神分析,自己理論,行動主義,特性・因子理論,実存主義的アプローチ,交流分析,ゲシュタルト療法,論理療法である。

 

カウンセリングの理論
カウンセリングの理論 國分 康孝

誠信書房 1981-01-20
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