日本心理臨床学会 心理臨床学モノグラフ第1巻 大場登著 ユングの「ペルソナ」再考―心理療法学的接近 (心理臨床学モノグラフ) 創元社 2,625円
「ペルソナ」の語源は、ギリシャ劇において俳優が顔につける「仮面」、そしてその仮面によって表わされる「役」とされています。
私たちは、生活していく中でいろいろなペルソナ(仮面)を持っており、日々の状況によって、その場にふさわしい仮面に付け替え、その場の役割を演じているように思えます。家族の中では母親、仕事中はカウンセラー、買い物をしているときはオバタリアンなどなど。役割を演じることで社会とのつながりを保ち、個人を取り巻く環境に適応しているように感じています。
この本で、わたしの師でもある著者は、ペルソナを「個における外界への構え、姿勢であって、個の期待・要請と、周囲・社会・集合意識からの期待・要請との折り合いとして成立する」と捉えています。さらに、ここでの集合意識とは「個人に対して、絶えず外部から働きかける社会的伝統・慣習・風習・習わし・世間・規範の総体であり、社会的規範とか世間の目といわれるもの」と考えられています。このように、ユング心理学の立場からペルソナを深く掘り下げた内容の本です。
一見堅そうな外見ですが、いたるところに身近な例が多く盛り込まれていて、読みやすいものでした。さらに、事例の章では、著者とクライエントとのやり取りが克明に記されていて、私が実際にクライエントに接する時に役立てていることが、おすすめ本に取り上げた理由です。
ユングの「ペルソナ」再考―心理療法学的接近 (心理臨床学モノグラフ) | |
大場 登
創元社 2000-09 |