わたしのおすすめ本 by 清原浩
加藤諦三著 「行動してみることで人生は開ける」 PHP文庫 514円
あるとき、こんな35歳ぐらいになった来談者が来てくれました。その人は座るなり、「私は全然困っていないのです。母が行きなさい、というので来ました」といわれた。一瞬、私は戸惑いましたが、よく聴いてみれば納得しました。「私は、家で食事をし、本を読み、好きなことができているので、何も不自由していないのです。でも、母が35歳にもなって仕事もしないで、何とかならないか、と言っているのです」と。またこんな方もいます。最近のニュースなど、事実にかかわる話は、何とかできるのですが、「興味関心はどんなことでしょうか」とか「将来どんなお仕事をしたいのでしょうか?」とかいうような内面にかかわることになると、「さあ」といっただけで、なかなか答えが出ない方もいます。自我防衛をしているのか、本当に途方に暮れていて、答えがないのか、なかなか、私にも判断がつきません。そこで、何回か面談した後に、上に掲げた本を一緒に読むことを提案しました。まだ実際に、その本にかかわって、話し合った事はないですが、何か、その方が行動に踏み切るきっかけになれば、と思ってです。いうなれば「読書療法」です。
さてこの本は4部に分かれており、1部が「なぜ行動することが大切か」と題されていて、「好きだからそのことをやるのではなく、そのことをやるから好きになる」ことを強調しています。確かに、「好きなことをやればよい」と助言しても、その好きなことがないという人も多いです。力まずにできることからしましょうということになります。2部は「行動を阻害しているもの」となっています。この本によれば、なかなか行動に踏み切れない人は何かにつけて決めこんでしまう傾向があるとされています。つまり、「できっこない」と。期間を決めて、その間、理屈をつけないでやってみようということを提案しています。3部は「行動すること、自分を変えること」ということで、こだわっている姿は「欲求にとりこまれている姿」であり、自分を捨てることで行動を起こすことができ、行動することで自分が変わると結論づけています。最後4部は「新しい自己の創造」となっており、人の目や人の評価を気にする、つまり人への依存から離れて、自分の胸の奥にある真の願望を探り出そう、それが新しい自己の創造につながる、と訴えています。
書いてあることはもっともなことであり、できたらよいだろうなとは思う。来談者と一緒に読むなかで、その方が少しはそんな気持ちになることを願っています。
行動してみることで人生は開ける―まず、できることから、やってみる (PHP文庫) | |
加藤 諦三
PHP研究所 1999-03 |